午前10時、カウンセリングに行く。俺は多分大丈夫。そんな大したことはないっぽい。ただ一人でお酒を飲まない方がいいですよと言われた。嫌なことをお酒で誤魔化そうとするくらいなら薬をもらって飲んだ方がいいですよと。だいたいどのくらい飲んでるのなんて聞かれてもそんなの計算してないし。
「まあ…朦朧とするくらいまで…」
「!…そしたら1L以上とか飲んでる感じですかね?」
数えてないが1L以上は絶対飲んでる。だって500mlの缶が2本だろう?そんなに酷いことか?
カウンセリングをした日の夜、家で一人酒を飲んでいた。脳細胞を殺しながらぼーっとYouTubeを見てたらアルコール依存の恐ろしさを伝える動画、岡田斗司夫が「人生の目標が幸福ってのがそもそも間違ってるんだよ」なんて説いてる動画なんかが目から体に染み入ってしまって洗い流そうと酒を飲む。スマホを投げて天井を眺めた。鈴虫が泣いていてもう夜はすっかり秋なのに俺はまだ夜もエアコンつけっぱなし。何もせずに1日が終わってしまうことへの罪悪感を誤魔化すために散歩に出た。一人でラジオを聞きながら歩いていたがまだ月の半分なのに通信制限になってしまって音が止まる。ヘッドホンを外して公園のベンチに座る。なんとなくタバコを吸ってみる。この世で一番意味ないものを、最近買ってしまった。今までもらうだけだったのに。夜の公園で一人タバコを吸っていると訳もなく悲しくなってくる。出来の悪い脳味噌はタバコを吸うことで起きる血管の収縮なんかを勝手に悲しみと結びつけてしまったんだろう。そして彼女に電話をかけた。電話が繋がるまでの間、永田とさきちゃんのことを考えてた。嫌なことがあった永田は久しぶりにさきちゃんと暮らすアパートに戻って、眠るさきちゃんのことを抱きしめる。そんな永田にさきちゃんは「私、お人形さんじゃないよ」と言うのだ。俺は、あれになってないだろうか。電話がつながった。京都の午前1時、パリは夕方6時。久しぶりにスタジオに入ったこと、ライブやだなー、俺って才能ないし、誰にも押されてないしさ、ホリデーとかさー、サーキットにも出れないしさ、全然ライブ人来ないだろうし、才能ないことが顕れてるんだよー。そんな風にもたれかかりすぎたら「治すべきはキタザトくんの歪んだ認知だよ」なんて言われてしまった。へへへ、さーせん。
アパートに戻ると外で立本が涼んでいる。なんだかが決まりが悪くて前歯を出しながらキモピース(キモいピースのことだ)をしたら立本は頷いてスマホを見てた。