脂マン

眠気を感じながらもバンドの作業を続ける。メールを送ったり、計画を立てたり。風呂に入っていない顔は脂ぎってテカテカとしているのに顔色は濁っている。顔をベタベタと触るもんだから手が脂に塗れて、その脂が髪にも、ギターにも、机にも、今打っているパソコンのキーボードにも…。膜に覆われた10畳ワンルームの完成ってわけ。

俺はわーきゃーが欲しくてバンドをやっている。のでどうすればもっとわーきゃーされるのか、どうすればもっと効率的に…なんて考えてしまいがちだがそもそもバンドなんていう非効率的、非生産的なものをやっているのに効率なんて求めるのは変な話だ。効率よくわーきゃーされたいなら俺はさっさと恥を捨てて渋谷スクランブルで大声を出してYouTubeに投稿すべきなのだ。もっと効率の良い、ユーザーフレンドリーなことをすべきなのです。と、他人の成功を妬んだりするたびにこんなことを考えて、ぐるぐる頭になった俺の気を紛らわせて、どーでもよくさせて、今はもう何周目に入ったのだろう。

自分の書いた文章なんかを見返してみると音楽、バンドのことばっかりでこいつはつくづくつまらない奴だと思う。「趣味はなんですか」と聞かれた時、非常に困る。音楽、は好きというかなんなら意地張ってやってるみたいなところがある(なんの意地だバカ)。だから趣味とは少し違うような?だからと言って「まあ、飲み会とか…飲酒ですかね…フヒッ…サーセン…www」なんてことを言うほど恥も外聞も捨てられたわけじゃない(が実際のところここ一年で楽しかったことの8割ほどを飲酒のイベントが占めるんじゃないだろうか)。嗚呼、キモい。酒の話ばかりしてる大学生はキショい。

バンドという活動をすることによって現在進行形で黒歴史を作っているんじゃないかと思うことが多々ある。先日母親から電話が来たと思ったら我のツイーヨを見たらしく「あんた何様のつもりか知らないけど、馬鹿なことばかり言ってるんじゃないよ」となかなか火力の強い言葉を浴びた。まあ、「馬鹿なこと」というのは自覚があるので大人しく全てを受け入れるが、「何様のつもりか知らないけど」というのは、効く。本当に、そうなのだ。わーきゃーされたいが俺は今誰にも求められていない。SNSだったりステージだったりちょっとカッコつけてみたりするけど、(何やってんだ)ともう一人の冷めた俺が離れたとこから俺を見つめている。「こんな奴が人を感動させられるのか!」とどっかの誰かが俺の部屋の隅から投げつけてきたが、ここは俺のテリトリー、俺は脂マン、そいつは脂で溶けて死んだらしい。

俺は脂マン。脂に塗れた手はなんだか変な匂いがする。